谷中安規展ワークショップ

2016.03.03 Thursday

彫ってみよう!摺ってみよう!木版画教室
2016年2月27日(土)10:30-15:30
兵庫県立美術館

谷中安規展にちなんで、子どもたちと小さなモノクロ木版画を制作しました。安規は様々な紙やインク具合、摺り具合を試行錯誤し、絵ごとにふさわしい木版画表現を選んでいたことが、黒一色の作品群の微妙な差異から伺えます。展覧会鑑賞で安規の絵や意図を観察し、彼が試みた様々な摺りの工夫を子どもたちに追体験してもらうという制作内容となりました。

今回のワークショップでは「黒一色」「素材や摺りの違いを試す」ことで、摺るごとに違う表現が現れる版画特有の驚きと楽しさに焦点を当てることができました。私も版画を摺り始めた頃のことを思い出し、楽しくてしょうがなかったのですが、何よりはっとさせられたのは、嬉々として摺りの違いを試みている子どもたちとその作品が、安規の制作姿勢や作品と重なって見えたことでした。きっと安規自身も、初めて摺る時の驚きを大切に制作していたに違いないと、子どもたちの制作から彼の本質を再認識させてもらったように思いますし、子どもたちも安規のような表現者になり切っていたのだと思います。そして、多様な摺りの違いを見比べるうちに、各々の絵と彫り方に合った摺り方、表現があるということを実感させられました。これもまた、安規が意識して取り組んでいたことのように思えます。

作品鑑賞を踏まえて作家の制作を追体験し、新たな鑑賞に繋がって行くという循環のあるワークショップは、偶然から生まれるものではありません。例えばもし、安規の作品鑑賞を深めないまま同じ制作をしていたら、いろんな摺り方があるという理解だけで終わっていたかもしれず、いろんな摺り方を「表現」として捉えられなかったかもしれません。また鑑賞で作品の形ばかりにとらわれていたら、制作が形の複製作業になってしまい、こちらもまた「表現」にまで至らなかったかもしれません。鑑賞と制作を結びつけるワークショップでは、制作の手順に重点をおいてしまいがちですが、美術館の専門家の緻密な作品考察によって鑑賞の肝・表現の肝をつかんでおき、それを制作に持ち込んだことが、今回鑑賞と制作が一体化できた要因だったと言えると思います。逆に言うと鑑賞と制作を結びつけるには、鑑賞側に立つ人と制作側に立つ人の視点を摺り合わせていく必要があるのかもしれません。鑑賞の場である美術館でのワークショップの醍醐味を存分に味わってみて、他のケースにも応用できることがいろいろあるかもと、反芻してみています。

Abuku Journal

news